薪ストーブの安全対策・事前準備編

 薪ストーブの安全対策のポイントは、煙突の熱をテントの布に伝えないように遮断できるかどうかということです。この時点でストーブは完全に燃焼し、煙突付け根部分の温度は、350℃に上昇しています。ところが、テントに接する部分は、「手で触ってもほんのり温かい」という程度に遮熱できていました。
 実は、今年の冬キャンプで、近くにいたご家族のテントが薪ストーブの熱が原因で火災にあうという事故に遭遇しました。昼の間、かまくらや雪だるまを作ってキャンプを楽しんでいたとても雰囲気のいいご家族でした。どなたにも怪我がなかったことが不幸中の幸いでしたが、ちょっとした原因が楽しみを台無しにしてしまうアウトドアの恐ろしさを再認識させられた出来事でした。今後の事故防止のためとはいえ、具体的なその事故の事例と原因を分析することは事故にあわれたご家族に失礼なことになりますので、私が教訓として得ることができた安全ノウハウだけをお伝えすることにいたします。(該当されるご家族からの削除依頼があれば、この情報を直ちに対応いたします。)

①煙突に耐熱バンテージを巻き付ける。

 耐熱バンテージは、バイクのマフラーに巻いて、近くに位置する脚部への熱を遮熱する鉱物由来のテープです。ネットで調べたところ、LEDAUT(レダホト) サーモ バンテージ」という製品の評価が高いようで、バイカーだけでなくキャンパーがストーブに使っているコメントもあったので、アマゾンで (5CMX5M) を購入しました。
 「玄武岩繊維」が主原料で、油断して家の中で作業するとチクチクするという情報を得て、水で濡らして外で締め上げるしました。端をクランプで締めて庭で巻き付ける動画をあげておいたのでご覧ください。 「ステンレ結束バンド付き」ということでしたが、このおまけバンドは不良品だと思います。どうやっても締まりません。数がもう少し欲しかったので、別にジョイフルから購入したバンドは見た目が同じながら感動的なほどに締まりました。

② テントプロテクターのセッティング

 テントプロテクターというのは、煙突よりひとまわり太い 直径12cmの金属パイプです。gストーブ純正は、ステンレス製で小さな穴が多数空いてメッシュ状になっています。ロングとショートがありますが、私は 50cmのロングを選びました。直系6cmの煙突と3㎝の空間を作ることで熱を遮断することができます。
 煙突には、直系が8.9㎝の物があります。これ設に12㎝のテントプロテクターをセッティングすると、1.5㎝の空間しか作ることができません。バンテージをまくと、空間はより狭くなります。私が見たテントが薪ストーブの熱が原因で火災にあうという事故の事例は、このようなセッティングになっていました。

③ テントプロテクターに耐熱布を巻く

 耐熱バンテージを巻いて、テントプロテクターをセッティングするのが、一般的な対策のようですが、Webではもう一段積極的な対策を動画で紹介している「よっしーきゃんぷ「」さんという方がいました。

 テントプロテクターの上に、 さらに不燃シートを巻き付けるという対策です。 これには驚きました。私が用意したテントプロテクターは50㎝なので、これに合うしかもちくちくしないタイプの不燃シートを探し、 MORIE カーボンフェルト 45cm×45cm に行きつきました。フェルトのように柔らかいシートです。 ステンレ結束バンド で5か所止めました。これによって、ページトップの写真のように、ストーブを350℃まで燃やしても、煙突部分に問題なく触ることができるようになりました。気持ち良い暖かさでいつまでも触っていたいような感触です。

④ ダンパー付き煙突と煙突1本追加で、高さを確保

 ダンパーというのは、煙突の内部に、回転式の蓋のような物を入れて煙の流れや外気の流入量をコントロールする装置です。ストーブが加熱状態になったときに、ダンパーで調整すばやく抑えることが可能です。石炭ストーブで育った道産子には、これなしでストーブを焚くという発想はありません。なぜ標準でないのかと思いながら購入。
 gストーブは、標準の煙突だけで、2m40㎝の高さになります。ダンパー付き煙突で2m70㎝。テントと高さがそろいました。煙突の出口をテントから離すために、もう1本追加して、高さを3mにしました。

➄ ローベンス標準の煙突口から煙突を外に出す

 クロンダイクを選んだ理由は、 ローベンスの特色である 煙突を外に出す口が標準で備わっていたことです。直系16㎝の口なので、直系12㎝のテントプロテクターは問題なく出すことができます。触って気持ち良い程度の テントプロテクターですが 、センターポールに近く十分な高さにあり、煙突の支えの機能を持つ標準の口から出すと、安心感は抜群です。

⑥ スパークアレクスターを自作

 煙突出口の話になって来たので思いだしたのですが、gストーブには、煙突の最先端部に装着する事で火花の飛散を軽減するスパークアレクスターというオプションが用意されています。本体を購入した時点で秀岳荘に在庫がありませんでした。標準は「煙突蓋」ですが、「これに金網を巻けば、火の粉は防げますよ」というスタッフのアドバイスを受け、その通りに加工しました。金網はジョイフルAKでステンレス製を購入し、煙突蓋の内部に入れて、リベットで固定しました。性能的にはスパークアレクスターよりも優れていると感じています。

⑦ ストーブの下にも、耐熱布を敷く

 ストーブより上ばかりを見てきましたが、ストーブの下にも安全対策が必要です。フロアシートがないテントは、土間上にストーブを設置して問題がないようです。クロンダイクは、フロアシートをセンターポール付近までジッパーで開いて土間を作ることができるのですが、フルフロアシートの快適さになじんでいたので、今更土間にしたいとは思いませんでした。
 対策として、耐熱布を敷けばいいわけです。gストーブオリジナル、ローベンスオリジナルのカッコいいロゴ入り耐熱布が用意されていますが、今回は、性能と価格で選択することにしました。溶接作業をするときに敷く工業用の耐熱布は、常温500℃、瞬間的には1500℃に耐える性能を有しています。溶接用の製品の中から、大きさが適度で、繊維が拡散しにくいコーティングを施している「keello 防火・難燃シート (80*60cm) 間耐火温度1500度」を選びました。

⑧ その他の安全対策

 薪ストーブ対応の温度計を用意しています。磁石付きで煙突にもセットできる製品ですが、gストーブは全部ステンレスなので煙突の近くに置いています。
 薪ストーブだけの対策ではありませんが、一酸化炭素チェッカーと、携帯用消火器は必需品です。別ページで詳しく説明しています。
 問題は、「焼き付き防止耐熱潤滑剤」を、使うかどうかです。テンマクデザイン・ウッドストーブのホームページでは「発火の可能性があり、 非常に危険ですので御使用はおやめください 」と、警告されています。「それなら使わないか」と考えたのですが、先輩ユーザーから直接聞いた話では、「これを使わないと煙突が固着して、どうやってもばらせなくなる」ということでした。
 実際に外で実験してみました。普通に塗って円筒の温度が上がってくると継ぎ目から沸騰するような感じで潤滑剤が湧き出て一部は下に垂れていきました。テント内では危険という印象でした。次に、手で直接、限界まで薄塗りしてみました。今度は湧き出すことなく、取り外しもスムーズでした。
 上記の警告には「 使用を重ねるとタールがたまり 」という文言がありました。
 そのことをふまえ、 結論からいうと、私は、次のように使用しています。
・本体に直接接続するダンパー付きを含む下部3本の煙突には、限界まで薄塗りして使用する。温度が上昇しないそれより上には使用しない。
・タールをためないために、ときどき高圧洗浄する。
・日常的には、スプレー式潤滑剤を併用する。
 

⑨ 結論 1番の安全対策は、薪ストーブを使わないこと

 ここまで書いてきて、改めて薪ストーブの魅力と難しさを実感しています。
 冬キャンプで暖をとるなら、石油ストーブで十分に目的を達成することができます。燃焼時間や着火・消化の容易さを考えると石油ストーブのほうが圧倒的に優れています。
 薪ストーブの安全対策・第一は「使わないこと」です。
 しかし、薪ストーブには抗しがたい魅力があります。薪ストーブは、冬キャンプの手段というより一つの独立した趣味といえる存在です。薪ストーブの泥沼にはまってしまったならば、多岐にわたる面倒な安全対策そのものがかけがえのない楽しみに変わってくるはずです。